1.評点にはバラツキがある

企業の信用調査(以下調査と言います)には特命調査(発注者より調査依頼を受けて行うもの)、自主的調査(調査会社が予め調査をしておき、後でコピーを販売する)、企業情報データベース、マーケッティング、会社年鑑用等の簡易調査(企業情報データベースや会社年鑑作成のために行うもの)などがあります。

企業調査は相手先企業への訪問取材を原則としますが、相手先の都合で電話取材になったり、あるいは調査員が無精者ですと電話取材で済ましてしまうことがあります。

しかし、訪問取材であろうと電話取材であろうと評点(100点満点)は特別の事情がない限り必ず付けられます。訪問取材と電話取材では情報収集にかなりの差がありますが、調査レポートには「電話取材で行いました」とはどこにも書きませんので、レポートの受報者(依頼人)にはどのような取材方法で行われたかは分かりません。

従って、付けられた評点にも「良く調べた結果の評点」と適当に付けた「いい加減な評点」があり、例えば、同じ50点でも実態はかなりのバラツキがあるのです。

依頼人とすれば、電話取材の場合は「料金を安くしろ」と言いたいところでしょうが、どこの調査会社も通常は、調査内容や調査手段で基本料金を設定しているわけではなく、電話取材だろうが、あるいは、1ページのレポートであっても、20ページのレポートであっても1社は1社として処理し、1社分の料金を請求します。

調査はやってみないとわからないことが多いため、成功報酬で行うと料金を貰えなくなりますので、一般的な調査会社の基本料金は固定性にしてあるのです。前置きが長くなりましたが、評点はどのように付けられているのでしょうか。

 
2.評点はこうして付けられる

 A・主観点

 1)調査マンの第一印象

大手調査会社では評点をプログラム化しており、調査レポートを入力すると評点が出てくるシステムを採っているようですが、調査マンも人の子であり、主観点がかなり入ります。

主観点とは、調査マンが
調査先を訪問したときの第一印象です。事務所が綺麗か汚いか、従業員の態度や応対振りどうか、などといったところです。

私の経験では、業績好調の企業は社員の応対が明るく元気であり、勢いを感じるのですが、経営内容の悪い企業は社員の応対が悪い傾向があります。

社長の愛人かどうかは分かりませんが、わけの分からないオバサンが出てきて、「何か御用」とヒステリックに文句を言われたりしますと「こんな会社二度と行きたくない」と思うことが稀にあります。そういうケースは最悪であり、大幅な減点対象になります。

こう言った「仕切屋的」なオバサンは調査マンがもっとも嫌いますから、絶対会わせないないようにした方が点数が上がります。

小さい会社の社長は「愛人管理?」と申しますか女性社員の管理を日頃からきちんとしておくべきであります。

 
2)社長の人物評価

主観点でもっともウエイトが高いのは、社長の応対振りです。調査会社によっては、社長の経営振りとか人物評価などを事細かにチェックすることがありますが、初めて訪問してせいぜい1時間くらいしか面談できないのに、社長の性格や人物像まで分かる筈はありません。

調査マンの人格を否定するような言葉遣いや態度をとられると、例え経営内容が多少良くても、「社長の人物評価」が最低となり、減点対象となります。

調査マンも人の子ですからウソであっても「WELCOME」と歓迎されたら嬉しいものです。調査を受けることに慣れている社長はその辺を心得ていて調査マンを良い気分にさせるのが上手です。

能力や程度の低い調査マンもいますが、バカにせずできたら「ヨイショ!」しておくとプラス評点が付きます。これは私の独断と偏見かも知れませんが、小さい会社の評点をウエイト付しますと、客観点が70%、主観点は30%の割合となるのではないでしょうか。時には30%以上になることもあります。

 B・客観点

 1)業歴

最近は業歴の浅い企業の健闘が目立ち、業歴の古い老舗などが倒産してしまう現象が起きておりますが、一般的には、会社を設立してから3年間は大手企業や銀行から相手にされないため、調査マンの目は厳しくなります。

実際に、脱サラをし、独立しても3年以内にサラリーマンに逆戻りする人がかなりおり、倒産統計に載らないまぼろしの倒産が相当数あるのです。

そう言った観点から「3年間」あるいは「3期連続」してというのは実力が評価されるひとつの節目であり、節目を無事にクリアーしないと、どうしても子供扱いされてしまいます。業歴だけはどのようにしても動かすことはできず、設立の日が浅ければ浅いほど評価は低くなります。

パクリ屋(商品取り込み詐欺会社)などの詐欺会社は新設会社では納入業者をダマすことが難しいので、休眠会社を買い業歴を古く見せようとするのはそのためです。

休眠会社の再興かどうかは閉鎖登記簿を調べるとすぐに分りますので、調査マンをダマすことはできません。

尚、資本金(払込資本)を気にする方が多いようですが、資本金の大小を問うよりも、利益をどのくらい蓄えているかという自己資本総額(資本金+内部留保)が重要であり、、資本金そのものに対する評価はあまりしません。

 2)資産内容(不動産)

資産には動産と不動産がありますが、預貯金、有価証券などの動産を外部から調べることは至難の業であり、把握は不可能と言えます。従って資産と言えば通常は登記所で調べることができる不動産になります。

小さい会社の場合は、法人が資産を持っていることは殆どないため、代表者がどの位資産を保有しているかがポイントになります。

また、不動産は無担保でしかもたくさん保有していれば良い評価が付きます。経営者がまだ若く、小さい会社の場合は、資産を保有していないケースが大半ですから、多くの会社は資産に対する評価は低いと言えます。

 3)財務内容(資金繰り)

資産内容が乏しければ、財務内容もそんなに良くないことが想像が付きますので、資産がない会社にはよほどのことがない限り評価は低くなります。

 )業績(結果主義)

調査会社は売上が毎期伸びて利益もたくさん出す会社に高い評価を与えます。業績好調でなくともしぶとく生き残る小さい会社やこれから頑張ろうとしている若い会社にはどのような評価をしているのでしょうか。

日本の全法人291万社のうち約70%は赤字決算を申告しております。小さい会社の大半は赤字決算なのですが、赤字の最大の理由は社長やその同族が給料を目一杯取り、法人として利益を出したくないからです。

つまり、法人として内部留保(利益を貯めておくこと)をするのではなく、社長個人が給料をできる限り多くとって利益を蓄えておき、会社に資金不足等何かあったら社長が資金を出す形をとっているのが一般的です。

全法人の70%が赤字計上でも倒産しないのはそのような背景があるからです。従って、小さい会社は赤字であっても不思議ではないのですが、調査マンは社長が本当にしっかりと資産や資金を持っているという証拠がないと、業績が赤字の場合は、どうしても評価が低くなります。

調査会社の採点基準は表面に出てくる結果に左右されることを覚えておいてください。

 5)取引先(大企業偏重)

仕入先、販売先等取引先が大手企業ですと、安定性を買われ評点は高くなります。一方無名の企業ばかりですと焦げ付きの心配などがあるとして評価を得られません。

しかし、小規模でも優良企業となった企業を調べてみますと、取引先は大手企業だけではなく、中堅中小であっても経営内容の良い企業と取引をしているところが成功を収めており、本来は大企業と取引していれば良いというわけではありません。

しかし、残念ながら、調査マンはそういうところに気がつく人が少なく、殆どは、大手企業のブランド名だけで評価する傾向にあります。

 6)社長の資質(保有資産偏重)

小さい会社は社長次第で決まると言っても過言ではありまえんが、社長の持っている資質や力量に関する情報は短時間の調査では把握することができないため、信用調査ではその部分を反映することが難しく、ウエイトは低くなっています。
 
調査マンが社長に関して気を使うのは、前述の資産を保有しているのか否かと言うことと、当該の会社を設立するまで何をしてきたのか等の経歴です。倒産歴などが分かりますと評価はかなり下がります。

しかし、社長の申告する経歴に対して細かく裏づけをすることは殆どありませんので、社長の保有する資産以外のウエイトは低いと言ってよいでしょう。

 7)大企業も中小零細企業も同じ採点基準

調査マンは、主観、客観的要因を総合して評点を付けるのですが、調査会社の評点は企業規模別に評価するわけではなく、大企業も中小企業も零細企業も殆ど同じ採点基準が適用されています。

大企業も中小零細企業も同じ土俵で採点されるので、小さい会社にとってはどうしても厳しい採点となる場合が多く、かなり頑張っていてもなかなか良い評価は付かないのが実情です。

格差社会と言われておりますが、企業信用調査の評点にも弱者に対する格差があるのではないかと思います。

 8)潰れない条件

毎期赤字を計上していても潰れない小さい会社は次のような特徴があります。このような小さい会社は法人としての業績や財務内容は悪くても赤字優良企業としてしぶとく生き残ることができます。

  (1)業歴が10年以上ある

  (2)従業員を身内で固めている

  (3)売上規模が比較的小さい

  (4)金融機関等外部からの借入金がない

  (5)代表者に無担保の不動産がある


 9)企業情報データベースの評点

企業情報データベースの調査取材には電話取材あるいは書面によるアンケート的な調査が多数含まれており、こういった取材では正直言って本来は評点を付けることは難しいのですが、殆どの企業に対して評点は付けられています。

企業情報データベースをインターネットで検索して、「本調査を○年○月○日に行っている」という情報が登録されていれば、その評点に対する信頼は置けますが、本調査の記録がない場合は、簡便な企業情報取材だけで付けられたものですから、評点を当てにすることは避けるべきです。


 10)評点に対する見方

  
 0点〜39点 警戒を要する。取引対象外となるケース
40点〜49点 注意を要する。大手銀行及び大企業は取引をしない可能性大
50点〜59点 多少注意を要する。ある程度の取引は可能
60点〜 差し当たり無難。取引は可能
企業評点の実態
本文へジャンプ

日本与信管理協会    信用調査と与信管理コンサルタント

ご存知ですか?企業信用調査の評点はこうして付けられます。
小さい会社のための信用調査と与信管理

あなたの会社の
         評点はこうして付けられる



 
サイト内の記事・写真・アーカイブ・ドキュメントなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載等を禁じます。